裸猿の思考試行

words&photos: かいと

 

 

和歌山に去年の9月から住んでいる。僕は今26歳。

とにかく服を作る場所は山の中があの時からの夢だった。

山籠りした、21-22歳の頃。僕は社会から逃げて、自分のエネルギーだけで山で生きられるか試したかった。

 

初めは友達2人とサバイバル計画を立てて冬の山の中の沼に食糧をほとんど持たずに入った。寒くて常に泥だらけ。

虫やカニを食べて、いけそうな変な草を食べて凌いだ。

友達2人最期の方はしんどそうだった。3日くらいして、終わろうという事で終わりにした。僕はまだいけると思った。

 

服飾学校の休みに毎週、踏み跡のない山に入って練習した。

わからない植物や虫は、文明に戻った時に調べる。

繰り返した。同じ場所でも行くたびに景色が変わった。

これは毒ない。これはアクが強い。これは猛毒。少しずつ僕の世界は立体感を増していた。

 

こんなに山奥の石に、文字が彫ってある。読めないけれど、昔の人間だと思ったらその地域の歴史や資料を図書館で読み漁った。

石も好きで、砂岩しかない千葉県で石を見続けた。海底に溜まった砂の堆積した砂岩。富士山の影響で火山灰を含む砂岩。土地の代謝で有機物が分解されて積み重なった砂岩(泥岩)。砂岩も深かった。時代によって。土地によって表情を変える。たかが砂岩と思っていた物は何処までも深く。地球の情報を何処までも含んでいた。

大きく見ても、小さく見ても何処までも潜れた。

行くたびに立体感を増す房総の里山は僕の人生を注いでもいいと思える場所になっていた。

 

頭のいい猿の特権を使って、地球の深さをもっと堪能しよう。

 

服飾学校3年生が終わった時。休学した。

1年間、好き勝手山籠りしようと決めた。

 

 

 

それから、様々なポイントで山籠りを決行した。1週間潜って、1日か2日、文明でバイトと研究をする。また1週間潜って1日か2日、文明でバイトと研究。そのうち慣れてきて、2週間潜って1日2日バイトと研究になってきた。

初めのうちは熱が出たりした沢山のダニも、僕には効かなくなってきた。ダニも愛せた。無限に付き纏った蚊も見えなくなってきた。腫れもしないし痒くない。

ミミズもうまいし毛虫もうまい。バッタもセミもうまいし、芋虫も美味しい。寄生虫がいる生き物も、本当の空腹なら火を通さなくても結構いける。住血線虫だけ注意すれば人間の胃液は強い。自らを焼き尽くしそうなほどに強い。腹ペコは無敵だった。

蛇は沢山いた。毎日4、5匹が目標。牛蛙も足の肉がでかい。地球からのご馳走だ。それらを追っかけてたらその辺の草も口に入れる。稲科の葉っぱはガムみたいに噛んどけば栄養も取れて殺菌もできる。地層の隙間から流れる水は動物のフンを含まないし、透き通ってうまい。

夜の寒さと暗さは生命のスパイスだった。

雨の日の夜は根源的な恐怖を感じた。寒くて暗い。川の音は大きくなる。昔の人の炭焼の穴で凌いだ。朝になって太陽の暖かさを受け取った時。僕は毎回、絶頂した。

 

 

僕は虫が大好き。爬虫類も大好き。小さい頃から大好きで沢山育てた。それらを殺し食べ、それをエネルギーに動く自分は街で見えなくなっていた生命の使命を感じていた。感謝して本気で生きる事。それだけで全てが愛おしい。命を感じて生きるのは至福だ。

 

砂岩も相変わらず見続けて、マンモスの歯の化石も見つけた。博物館に持って行って学芸員さんはびっくりした。後日判明した。マンモスの祖先。ムカシマンモスの乳歯だ。子供で死んだ個体だ。まだ削れてない。千葉県でまだ乳歯は例がない。寄贈してくれと。

僕は拒否して、自分で砥め回して、僕のじいちゃんに送った。石好きのルーツはじいちゃんだから。

 

 

熊のいないこの地域で1番強い生き物。僕。この特権は僕の中にいる神を自由に堪能させた。

 

一つの場所に留まって生活をしているとどんどん。その周りが住みやすくなっていく。気がつけばそこは僕の部屋。

 

しかし、時々聞こえる猟銃の音には少しドキドキした。時に全裸の僕が猟師にあったら。撃たれるかなって。

 

言葉は少しずつ出なくなってカタコトを増していった。

1、2週間に一回のクライミングジムでのバイトの時、言葉がうまく喋れなくて苦労した。思った事はあるのだが、出るまで時間がかかる。

 

ある日、文明に帰った時。瑞穂に会った。

岩登りの約束をして、後日、有名なボルダーに行った。

暑い日だった。

着いてすぐ僕はパンツになって岩の上から水に飛び込んだ。

彼女も下着になって飛び込んだ。僕は思った。

あれ!この子、僕と遊べる!

恋愛の力はすごい。人間は思春期に性的に満たせなかったモノを一生かけて取り戻そうとする。これはその人間の習性と社会の性認識を俯瞰する事でしかコントロールできない。性はあまりに大きくて人間には認識できていないが、性は人間のものではない。性のもとに人間は存在する。性は卑猥ではない。我々は卑猥ではない。猥褻な行為によって生まれるなんて自己否定の根底だ。なんて。僕が哲学を話し始めると止まらない。危ないから止める。笑

 

山で全てを手に入れた気分になっていた僕は一気に空腹になった。

彼女は狭い山の中で激しく生きられない。

俺、ちょっとお金稼ぐ。

狭くて何処までも深い房総の山を心に。

2人でもっと広く深く地球を堪能しようと思った。

僕1人では即身仏になるところだった。社会から逃げきれそうだった。彼女のおかげで広く深く地球を堪能しようと思えた。

全裸は最高だけれど、人間。かなり弱い。毛皮が欲しい。なあ。

 

新4年生として服飾学校に復学を決めた。俺、人間の毛皮作る!

 

見えた景色を求めて。今もこの道の上。みんなのおかげで走り続けているんだ。

 

最近のお気に入りソング。

 

ジャズから。ジャコパ Opus Pocus。

日本人なら。友部正人。ふーさん。

レゲエなら。メイタルズ Pressure Drop。

ダブなら、リーペリー Huzza a Hana。

ソウルから。Ann peebles Hangin’on

 

 

 

words&photos  かいと

宮崎海杜 26歳   千葉県生まれ今は和歌山。
クライミングウェア。Gekko japonicus の制作をしながら地球を堪能中。裸足登攀。
60-70sの音楽好き。
地質。野湯。アート。野食。石拾い。

instagram : https://www.instagram.com/gekkojaponicusjp/
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