開拓者「ぐんま太郎」さんにインタビュー!

words&photos: dropknee

 

私たちは、

 

誰かが作ってくれた服を着て、

誰かが育ててくれた食材を食べ、

誰かが建ててくれた家に住み、

生活をしている。

 

誰かが奏でてくれた音楽に喜びを感じ、

誰かが描いてくれた絵画に心を震わされ、

誰かが紡いでくれた物語に人生を学んだりもする。

 

 

そしてクライマーの私たちは、

 

誰かが拓いてくれた山へ行き、

誰かが整備してくれた登山道を歩き、

誰かが可能性を示してくれた岩を登りに行く。

 

時には、それがかけがえのない素敵な思い出になったり、悩みの種になったり、生涯を賭けての目標になったりもする。

 

 

クライミングの世界の中では、そのような誰かを「開拓者」と呼びます。

 

 

本日はそんな、群馬を拠点にする開拓者「ぐんま太郎」さんにインタビュー!

 

 

ぐんま太郎さん

関東のボルダラーなら、一度はその名前を目にしたことがあるのではないでしょうか。
YouTubeでカンニングをしようと課題名で検索をかけると、高確率で出てくる「ぐんま太郎」さんの完登動画。
あらゆる岩場に出没し、なおかつ自分でエリアの開拓も進める、驚異のフィジカルクライマー。
YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/@gunma-tarou


 

 

——-本日は宜しくお願い致します!

まず、そもそもなのですが、太郎さんがクライミングを始めたのはいつ頃なのでしょうか?

 

クライミング始めたのは、18歳から20歳くらい。

テレビで小山田大さんがDream time登ってるのを見たのがきっかけで。

 

——-あ!もしかして情熱大陸のやつですか?

 

そうそう、情熱大陸。

子供の頃から山入ったりして遊ぶのが好きだったから、これ(クライミング)だったら特に道具も必要無さそうだし、やってみよう。

で始めた感じかな。

近所の山に入って、適当にそこら辺の岩を登って。

 

——-そうだったんですか。クライミングジムからではなく、いきなり野生の岩を登り始めたんですね。

 

そうだね。ジムなんて行ったこと無かったね(笑)

 

——-太郎さんらしい(笑)

では、初めてジムに行ったのはどのタイミングで?

 

初めてジムに行ったのが、20歳過ぎた頃かな。

 

赤城の山でいつも通り登れそうな岩探してたら、水汲みに来てたおじさんが声を掛けてくれて。

今思えば凄いんだけど、そのおじさん指がほとんど無くて。リードのクリップでやっちゃったって言ってたけど。

 

その人が、「近くに赤城ボルダーっていうのがあるよ」って教えてくれて。

その時はまだボルダーエリアがあるとかって知らなかったから、そこで初めてちゃんとしたボルダーにも行って。

こういうところに、クライミングジムがあるっていうのも教えてくれて。

 

それで初めてシューズを買いに行ったのが、前橋の「ウォールストリート」だった。

 

——-ということは、それまではシューズや道具とかが何もない状態で登っていたんですか、、、?

 

そうそう。まあ登ってたのは、瓦礫の山みたいな感じだけどね。

普通の運動靴で、何もつけずに登って。マットも無しで。

チョークとかも知らなくて(笑)

 

なんか橋の施工された岩壁とかあるじゃん。

そういうのも登って遊んでた。

 

なんか岩登りっていうより、アクティビティとして、なんか山の中で出来れば良いかなって感じだった。

 

——-なるほど。そもそもクライミングをスタートした時点で、自らで登攀対象を探して遊んでいたんですね。

それを聞くと、今開拓活動をされているのも、ごく自然な流れというか。

 

そうだね。山の中で遊ぶ上で、自然とそうなっていったね。

 

 

 

——-自分の登った岩に、課題名やグレードなどを意識して付け始めたタイミングってあったんですか?

 

タイミングってなんだろうな、、。

あ、でもYouTubeで見てからか。

みんななんか初登とかで動画載せるじゃん。

エリア公開する、しないは問わず、名前とかグレードとか付けてYouTube載せ始めて。それで仲間が増えて。

ここ2,3年は開拓したエリアをトポにまとめるようにしている。

 

——-なるほど。YouTubeでしたか。

まとめ始めたのがここ2,3年ということで、トポになっていない課題も沢山ありそうです。

 

そうだね。まとまってないのはYouTubeに単発で載せているようなやつかな。

 

で、なんか最近、そういう昔登ったやつを再登したりすると、岩が苔だらけになったりしてるんだけど、

なんかこのままで良いのかな?って。

残せるような形にしておいてあげたいな、と思って。

 

それで今、昔登ったやつを掃除して、トポに残して。

みたいな作業を、一昨年あたりからしてる。

 

——-そうなると、自分の為だけのクライミングでは無くなってくるというか。

 

そうだね。

自分の為のクライミングよりも、共有したい仲間がいるから、下地もめっちゃ整備するし、余計な手間は掛かるけど。

目的は変わって来ちゃってるね(笑)

 

——-それは、やはり仲間とかが集まったり、誰かが登ってくれると嬉しいからですか?

 

なんか今まで(クライミング)を十何年ってやってきて、ただ自分の為に山に入って登るっていう純粋な行為が、どうなんだろうなって思って。

それだったら誰かに繋いでいけるような形で残した方が、世の為になるかなと思って。

自分だけの欲求を満足したところで、って。

 

自然に帰って苔まみれになってしまった、昔登った課題とかを見ててそう強く思った。

 

なんか、そのいっときに消費しただけで、何も残せてないなって。

どうせならなんか誰かやる時に、ワクワクだったりを繋げられたら、っていうのが大きいな、最近は。

なんかただの消費で終わるのは、悲しい感じがするんだよね。

 

 

 

——-そんな太郎さんのお陰で、僕たちも沢山楽しい思いをさせて貰ってます!ありがとうございます。

開拓もかなり大変な作業だとは思うのですが、具体的に何が一番しんどいとかありますか?

 

グレード考えるのと、苔掃除。

 

苔っていうか、群馬って山の中にポツンと岩があることが多くて。

なんか山と一体化してる岩が多いんだよね。上にすごい土が乗ってたりとか。

 

ただ登るだけだったら、その面だけ磨いてとかで済むけど、

それだと何年か経つと上の土砂が積もって来てまた同じような状態になるから。

上の土をあらかた鎌とかで切り分けて、地面ごと取り除く作業がスゴく辛い。

(登った課題は)向こう3年は維持したいなって、思ってやってるから。

 

——-確かに。太郎さんが初登した岩は、結構綺麗な岩が多い印象です。

登攀に必要な場所だけじゃなくて、岩全体が綺麗な状態になっていますよね。

 

なんかトポとかでさ、ここ登りますって矢印のラインだけが綺麗で、左右に苔がいっぱいあるのとかがあんまり好きじゃなくて。

ある程度スタートは決めるけど、自分で選択肢が見つけられるように、綺麗にしておきたいんだよね。

決められたライン上を登るのって、なんかジムの課題みたいで。

ある程度自由を持って楽しんで貰いたいっていうのが、あるね。

あと綺麗だし、磨くと。

 

——-なるほど、そういう意図もあったんですね。

岩はどういう風に探しているんですか?凄く気になっていて(笑)

 

田舎にある道を車でひたすら走る。(笑)

大抵、林道入っていけばあるよ。

あと山って、谷になってるじゃん。谷攻めれば大体あるし。

 

地形図で等高線とか見て、この角度から平坦になってるから、、とかもあるけど、

大体は実際に行って、ありそうだなと思ったら谷に入る。

 

——-ええ〜!そうなんですか!

暇な時は基本岩を探している感じですか?日課というか。

 

そうだね。ただドライブするのもあれだし。

行ったことないところ行くのは楽しいし。

 

昔登ってて、最近トポにまとめ始めたんだけど、

埼玉と群馬の県境に「神流川」っていうのが流れてて、その辺りは凄いいっぱいある。

どこに入ってもある。沢に入れば必ず見つかる。

 

——-これだけ長年いこと沢山の岩を登っていても、まだ見つかるっていうのが凄いです。

ちなみに今日は瑞牆に遊びに来ていますが、こういった公開エリアの既製課題とかって、普段はあまり登らないですか?

 

 

既製課題、いっぱい登りたいんだけど、あんまり時間ないんだよね(笑)

見つけた岩の掃除しまくっちゃってて(笑)

(自分の開拓だけだと)グレードとかが分からなくなっちゃうから、本当はバランス良く来たいんだけど、掃除で一日終わっちゃう時もあるし、、、。

 

 

 

——-そうですよね(笑)

太郎さんのグレード感ですと、既製課題の4段や5段といった高難度課題も当然視野に入ってくるとは思うのですが、そういった方向に意識が向いたりは無いですか?

 

う〜ん。インスタとかでめっちゃ流れてくるじゃん。4段とか5段とか。

なんか長いことやってて、これ突き詰めたところで、虚しさしか残らないなって思ったんだよね。

 

それだったらグレード追い求めるより、

夏とかあんまりコンディション良く無い時に、2段とか3段登ったりとか、そういう楽しみ方でも良いかなって思って。

 

——-あ〜、なるほど。

グレードというよりは、自分が全力を出して登り切ったぜ!っていうのが大事だと。

 

そうだね。

なんか5段とか登れたら凄いけど、登れたところでって思っちゃうんだよね。

 

それだったら3級とか2級とか、適正なグレードを学んで、

みんなにシェア出来る岩場を作るのに専念したほうが、為になるって思うんだよね。

 

——-太郎さんのエリアは級課題もいっぱい作ってくれていて、とてもありがたいです。

 

段課題を登れる人ばっかりじゃないから。

今後クライミングを続けていく子たちにも、遊び場所っていうかを残したいなっていうのが、最近すごく強くて。

 

 

 

 

 

——-話の趣旨がずれますが、太郎さんってトレーニングしてらっしゃいますか?

 

全くして無いです(笑)

ただ岩登るだけ(笑)

 

 

——-そうなんですね。めちゃくちゃ腕の筋肉が凄いから、何かされているのかと。

 

あ、これは18歳くらいの時に筋トレにハマってて。

なんか、それが維持されちゃってる(笑)

 

——-なるほど(笑)  その筋肉が出来た上でクライミングを始めたんですね(笑)

 

そうそう。なんか昔パルクールやってたんだよね。

なんか飛んだり跳ねたりしてて。

 

——-パルクール!!それは意外でした。他にスポーツとかされてたんですか?部活とか?

 

いや〜、やってないね。

動くのは昔から好きだったけど。

 

 

 

 

——-今までで一番思い出のある課題とかってありますか?

 

思い出のある課題か、、。なんだろう。

ぱっと思い出せるのが、今開拓してる中之条ってところなんだけど。

そこの、ちょっとでっかい「惜別の時」っていう三段くらいのやつ。

が、一番残ってるかな。思い出せるのは。

 

 

——-ちなみにそれは場所を公開していますか?それともローカルの内々で?

 

いや、誰にも教えて無いんじゃないかな。

なんか場所がマニアックで。

その周りは全然開拓してなくて、その岩は結構大きいんだけど、その一つのラインしか出来てなくて。

いつかシェアしたいな、と思ってる。

 

——-なるほど、それは楽しみです。

既製の課題で、今目標にしている課題はありますか?

 

全く無い(笑)

全く思い浮かばない(笑)

 

——おお〜!やっぱりそうなんですね。

ちなみに太郎さんが登った、既製課題の最高グレードとかって覚えていますか?

 

四段−かな。

綺麗に全部、四段−だね。

三峰の「ひもSD」とか、四国の「ディアマンテ」とか。

あとなんだろ。東北のローカルのやつとか。あれも四段かな。

 

——結構国内の色んなエリア行かれてますよね。来週も広島だったりとか。

 

いや〜、でも全然行ってないと思うよ。

小川山とかも全然登れてないし。登れてない初段とかもいっぱいあるし。

 

だから最近スルーするもんね。岩見つけても。

掃除し出すとまた戻って来たくなちゃうし、キリがないから(笑)

 

——まだまだ無限にクライミングを楽しめそうですね(笑)

岩を見つける「勘」のようなものも、太郎さんには備わっているのではないでしょうか。

 

ん〜。場所が良いんだと思う。群馬っていう。

俺が特別見つけるのが上手いとかじゃなくて。

群馬なんかあれだよ、適当な山入れば岩あるよ。

 

——そうなんですか。ポテンシャルありますね、群馬。

クライミングは一生続けていくと思いますか?

 

一生続けてるかな。

最近は苔掃除辛いし、もうやめようかなと思う時もあるけど(笑)

その日の気分次第だよね。

でもまあ何か残したいなっていうのはあるから、ある程度まとめられるまではやるかな。

 

クライミングにはお世話になったから。

 

——クライミングと出会って、やっぱり色々と変わりましたか。

 

うん。クライミングやってなかったら、何やってたんだろうな。と思うもん。

今、ぱっと辞めて何やるかって言われたら思いつかない。

 

だから今もやってんのかな(笑)

 

 

 

 

——では最後に、太郎さんの開拓する岩を楽しみにしている皆様へ、一言何かあればお願いします。

 

仲間内でシェアして楽しむ分には、エリアも荒れないと思うから、

みんなどこ行っても顔見知り、みたいな感じになったら良いかなって思う。

 

あと、群馬をもっと開拓する人が増えたら良いな、とも思う。

 

——そこは結構ウェルカムに、自分の開拓しているエリアとかも、どんどんみんなで盛り上げていきたいなって感じですか?

 

そうだね。知り合いだったら全然。終わらないもんね、だって一人だったら。

あと、人の新しい課題を近場で登りたい。

自分の課題だけじゃなくて(笑)

 

——確かに、今だと人の課題登るのが貴重な体験になってますもんね。(笑)

もし我こそは!という方がいらっしゃいましたら、是非群馬の開拓へも足を運んでみて下さい。

 

ぐんま太郎さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!