クライミングという遊びに、未だカウンターカルチャーとしての匂いが漂っていた時代のクライマー達。
その何処となく不良臭い佇まいであったり、簡単には踏み込めないアンダーグラウンドな世界観だったりが、当時を知らない21世紀生まれの僕に格好良く映るのは、ただの懐古趣味だけではない気がするんです……
そんなクライミング黎明期に漠然とした憧れを抱く気持ちに共感してくれる仲間を増やすための晩酌会。
第一回はBEAMSハウス丸の内店の髙橋良太さんにお付き合いいただきます。

dropknee(以下d) : 第一回目は皆様ご存じ、日本を代表する洒落者が集まるビッグカンパニー”BEAMS”の髙橋良太くんにお越しいただきました〜。
髙橋良太(以下髙) : なんか恥ずかしいな(笑) 宜しくお願いします。
d : 早速だけど、良太っちが好きそうな雑誌を持ってきたよ。
2005年7月3日発行 ROCK&SNOW 028(山と渓谷社)
髙 : うわ、表紙めっちゃ格好良くね?クライミング全然分かんないんだけど、この雑誌は毎回こんなテンションの誌面なの?
d : いや、この号が特別にファッション特集号みたいになってる。表紙でジャケ買いしたんだよね。
普段はもっとクライミング自体の内容にフォーカスした雑誌だよ。
髙 : そうなんだ。時代もあるんだろうけど、まず第一印象がめっちゃ裏原っぽいな。
d : 確かに、サイズ感とかもそのノリだよね。
髙 : やっぱ雑誌の見せ方もそういう方向に寄せてるのかな?パッと見もうニトロだもん。
※ニトロ-NITRO MICROPHONE UNDERGROUND 1998年結成の日本HIPHOPグループ

d : ここからが特集ページ。どう?りょーたっちが思う今のクライマーのイメージと比較して?
髙 : なんか、野生味がある。(笑)
d : 何それ、もっと詳しく(笑)
髙 : 何だろう、洋服というより人となりの部分が大きいのかも知れないけど、着こなし方といいオーラといい「自信持ってる」感じが明らかにあるよね。
スケーターとか、ストリートで生きてる人ってそういう雰囲気あるじゃん。「俺、スケートやってます」みたいな。それに近い。
d : 確かに。今一般的なクライマーのイメージって、もう少しアスリート寄りで爽やかな印象が強いのかも。

髙 : あと、このチョーク服につけてる演出が格好良い。チョーク加工のアパレルとかdropkneeで作ってよ。
d : それクライマーが日常で着てたらただの汚れなんだよね(笑)
髙 : そっか〜、俺からしたら結構憧れというか、格好良いんだけどな。
髙 : このTシャツのデザインとかBurlonじゃん。グラデーションも良いね。
これNorthFaceが出してんのか!Burlonの元ネタ実はこれだったりして(笑)
※ブロン-Marcelo Burlon イタリアのデザイナーブランド 写真のようなフェザー風プリントのTシャツが代名詞
d : めちゃイケてるよね。しかもこれ、平山ユージさんのシグネチャーラインらしいよ。
髙 : その人は名前知ってるわ!めっちゃ登る人でしょ。
d : そう、めっちゃめちゃ登る(笑)

髙 : ここに載ってるアイテム全部そうなんだ。Yuji’s TシャツとかYuji’sパンツとか書いてある。すご。
え、今もそういうクライマーのシグネチャーモデルとかって普通に出てるもんなの?
d : あんまりイメージないかも。クライミングシューズとかだと結構あるけど、アパレルは滅多に聞かないな。
そういう意味で、クライミングウェアも結構売り手側のパワーバランスが強かった時代なのかもね。憧れで服を買う人が今よりもっと多かったというか。
髙 : 確かに。そういうとこもやっぱり裏原の文化に近い。

d : こっちはこの小山田大さんってクライマーの方が自分でディレクションしてる「inga」ってブランド。ちょっと和な雰囲気が入ってる。
髙 : ろうけつ染めTシャツやばいね。作るのに凄く手間ひま掛かるでしょ。やっぱりこれだけ値段も倍以上高い。これクライミングのアパレルブランドでやってるのめっちゃ尖ってんな。
d : 機能性だけで言ったら要らないデザインだもんね。
※ろうけつ染め-模様部分を蝋(ろう)で防染し、染色後に取り除く伝統的な染色技法。
髙 : Tシャツのグラフィックとかは横ノリ系っぽいのも多いね。QuiksilverとかOpとかその辺の。
d : 古着で今また人気なんでしょ。その辺の90sとかoosとかのも。クライミングウェアも実は値段上がってたりすんのかな。
髙 : あるかも。この「Verve」とかめちゃくちゃ格好良いじゃん。これ普通に欲しいな。
メルカリ探してみよ。
※Verve-米国のトップクライマーChristian Griffithが1988年に創業したクライミングウェアブランド。中でもBelikosパンツは多くのクライマーから支持を得る人気アイテム。

髙 : あった!真ん中の人が着てるのと一緒の半袖スウェット!そこそこ値段するね。やっぱクライマーに限らず目をつけてる人もいるのかな。それこそBlueroomとかに裏原の括りで置いてありそうだもん。
※Blueroom-90sのストリートカルチャーを軸に展開する原宿のヴィンテージショップ
d : 起用してるモデルの人も世界観ハマってるね。
髙 : ここのブランドに関しては、デザイナー自身が元からクライマー以外の、ファッション目的で買う層も視野に入れて服作ってたのかもね。
髙 : お、俺の好きなACGじゃん。

d : そうなのよ。patagoniaとかと並べて出してくるところが、この特集本当にクールだよね。
ちなみにこのpatagoniaもモデル着用は「rhythm」だよ。
髙 : マジじゃん。
d : まあrhythmってクライミングのラインだから当たり前って言えばそうなんだけど、今改めてファッション視点から見るとおおってなるよね。
確か2〜3年しかリリースしてなかったはずだから、この時代のクライミングウェアを読み解くには結構鍵になるラインなのかも。
髙 : この「Prana」って凜太郎が好きなやつでしょ?

d : そう。俺の好きなヨガもちょっと絡んでるからね(笑) あと当時のクライミングフィルムとかでイケてるやつ、Pranaがスポンサーについてるやつ多かったんだよ。それこそこの号の頭の特集に出てるクリスシャーマとかも着てるし。

d : これ見て最後のアンケート。①が服を選ぶ時のポイントだって。

髙 : 小山田さんの「軽いもの。」(笑) なんか一番好きだわ。
d : そうなんだ。何で?(笑)
髙 : だって本当に軽ければ良いだけの人がろうけつ染めのTシャツなんか作んないっしょ。
d : 確かに(笑) こっちの岡野さんの「かっこよさ、色。スポーツっぽくないのがいいですね。」みたいな回答の方がしっくりくるもんね。
髙 : でしょ。でもこういう質問に対してはあくまでこういう答えをして、別に洋服なんてなんでも良いっしょ、っていうスタンス。だけど実際のところはしっかりと見られた方を考えて、そこも含めてファッションを楽しんでるんじゃないかな。スタイルに軸があって格好良い。
小山田さんを始めに、そういう部分が全体の雰囲気として滲み出てて、誌面を通して俺たちもそこを感じれてる気がする。
d : なるほどね。

髙 : 今は売り手が製品へのこだわりとか、チャームポイントとかを語っていかないとやってけない部分があるじゃん。さっき言ってた売り手と買い手のパワーバランスの問題で。そういったことも総括して、当時ならではのカウンターカルチャーとしての魅力があると思うよ。
d : 逆に岩にしか興味が無くて、ファッションとかは何も考えてなかったけど、たまたま取り巻く環境とか周りにイケてる人が多くて自然とこうなってた説はない?だからインタビューの受け答えが実はマジの素みたいな。
ほら、DJとかでファッション興味無い音オタクっぽい職人気質なスタイルの人でも、アングラなシーンにいると自然とそういうスタイルになって、結果ファッションも格好良く見えたりすることあるじゃん。
髙 : まじ〜?だとしたら確実にクライミングシーンの中にこのスタイルを持ち込んだ、センスに長けたアンテナ高い誰かがいるよね。だって絶対にもっと登りやすい服あるもん。ほら、トライアスロン選手が着てるようなピタッとしたやつとか(笑)
d : あ!まじででもカラフルなタイツとか履いてタンクトップ着て、みたいなのが流行った時代もあったって聞いたことあるかも!
髙 : ほら、絶対誰かが持ち込んでるって。
d : やっぱ平山ユージさんじゃない。ほら、このアンケートも「登れそうなウェア」って。深みのある回答じゃん(笑)
髙 : うわ〜、マジでファッション的にもキーマンな可能性あるな。

d : じゃあ今度はもうちょっと時代を遡った雑誌探してみましょうかね。ところでさっきのVerveのスウェット、メルカリで本当に買うの?
髙 : 結構マジで悩んでる(笑) もし買ったら見せるわ。
d : やった〜、楽しみにしてます!
Photo Credits
本記事内の誌面画像は、
(別冊)山と溪谷 Rock & Snow 028号より引用しています。
編集・資料参照目的での使用であり、
著作権は出版社/山と渓谷社に帰属します。
words & photos : dropknee

